家相こぼれ話
このページは「家相入門」とは違い、踏まえなくとも吉相の家は建てられるのですが、知っていれば家相についてさらに深く理解ができる関連する話をまとめています。鬼門
家相の話題になると、トイレや玄関の位置のほかに、鬼門あるいは裏鬼門という言葉を必ず聞きます。
鬼門は北東方、裏鬼門はその反対側の南西方の方角の別名ですが、他の北西や南はそのような別名はないのに、なぜ北東と南西にはあるのでしょうか。
ここではそんな鬼門について、そもそも鬼門という単語はどこからやってきたのか、五行からみた場合、家相における鬼門の3つに分けて説明していきます。
鬼門の逸話
鬼門のいわれは日本ではなく、古代中国からやってきました。鬼門にまつわる話にはいくつかありますが、およそ次の「伝説・風向き・外敵」の3つに分けられます。伝説
『 中国のはるか東の海上には桃都山(とうとざん/あるいは度朔山)と呼ばれる山があり、その名の通り頂には枝葉が三千里にもわたる桃の大樹があった。桃都山には様々なものが棲んでおり、桃の樹上にすむ朝を知らせる「金鶏」、木の枝がアーチ状に曲がりくねりちょうど門状になっている隙間を通って人間界に出入りをしている「鬼神」、その鬼神たちを見張る神荼(しんと)と鬱塁(うつりつ)という二人の「門神の兄弟と虎」がいた。
桃都山では朝に金鶏がなくと、人間界に出かけた鬼神たちは一度必ず山に戻る決まりがあった。このため、桃都山は度朔山(どさくさん)とも呼ばれている。
門神の兄弟は桃都山へ帰ってきた鬼神たちが人間界で人に危害を加えていないか検問を行い、悪事を働いた鬼神を見つけると葦の縄で縛りあげ、二度と悪さができぬよう虎に食われていたため、全ての鬼神に恐れられているという。 』
桃都山では朝に金鶏がなくと、人間界に出かけた鬼神たちは一度必ず山に戻る決まりがあった。このため、桃都山は度朔山(どさくさん)とも呼ばれている。
門神の兄弟は桃都山へ帰ってきた鬼神たちが人間界で人に危害を加えていないか検問を行い、悪事を働いた鬼神を見つけると葦の縄で縛りあげ、二度と悪さができぬよう虎に食われていたため、全ての鬼神に恐れられているという。 』
といった、このお話の中で鬼神が人間界に出入りするため通っていた、桃木の枝張りに生じたアーチ状の隙間が桃の幹からみて北東方にあったため、北東は別名「鬼門」と呼ばれるようになったという説。
風向き
中国は地理的に夏は南東の風とともに大量の雨をもたらされ暑さが厳しく、冬はシベリアやオホーツク海方面からの厳しい季節風が吹きます。乾燥している冬場においては、北東方に煮炊きする竈をもってきてしまえば少しの火の粉でも飛ぶと危ないですし、風呂をもってくれば寒く医療技術の発達していない昔では伝染する風邪やインフルエンザなどにかかれば自分のみならず周囲にとっても命取りです。
この冬場の季節風を神格化させ鬼神とあらわし、この風が北東方から地域へ吹き込むため、北東を「鬼門」と言うようになった説。
※古代中国における鬼神の種類は「死者」「自然物や自然現象の神格化」「損失を及ぼす害悪」にだいたい分類できます。古代の日本も同様ですが、程度の甚だしさや想像を超えた、ある種理不尽なものを人の納得できる範疇に落とし込もうとする過程において、鬼や神と名をかりてつける傾向があり、伝説は「死者」または「害悪」、風向きは「神格化」、外敵は「害悪」とみてとることができます。
外敵
昔は日本でも各大名がしのぎを削っていた時代もありましたが、島国のような日本とは違い、他の国と地続きである中国では度々、同族同士の争いのほかにも異民族間による小競り合いや侵攻がありました。紀元前3-5世紀ごろの漢民族の最大の敵であったのは匈奴(きょうど)と呼ばれる今のモンゴル高原地域で栄えた遊牧騎馬民族です。この当時の先進的な戦闘術であった騎馬でもって疾風のように領土に入りこみ、強弓を駆使して易々と目的を達し離脱する匈奴に、同族で争い疲弊し、また農耕によって成り立っていた漢民族では立ち向かうどころか手も足も出ませんでした。
このときの匈奴は熾烈で、後に中国統一を成し遂げた時の皇帝であった秦の始皇帝は、この民族をとても恐れつつも何とか優位に立とうと、それまでそれぞれの国が独自に作っていた長城を整備し、北東方に最初期の万里の長城建設にとりかかったほどです。
しかし、鬼門という言葉の成り立ちは分かりましたが、それらの話の中に家相に結びつく話は一切でてきていません。では、そんな鬼門がなぜ家相と融合しているのかと考えると、次の五行思想と九星の象意作用にいきつきます。
五行思想
東洋において昔の人たちは、理不尽なものや自力ではどうにもならないものにおいては、人ならざるものとして鬼や神として線引きし理解を避けた一方で、あらゆる事象を「木(もく)・火(か)・土(ど)・金(ごん)・水(すい)」の5種類の元素の内に落とし込み、世界を理解しようともしていました。
相生
乾燥した草木は火を起こすのにちょうど良く(木生火)、火は木を燃やして灰を生み出し(火生土)、地中では輝石や金属が熱によって結晶化(土生金)、地中から取り出された金属は空気中の水分を集め表面に水滴を現じ(金生水)、水は草や樹木を育みます(水生木)。このように何かから何かを生み出す循環を相生(そうじょう)の関係といいます。相剋
金属は火の熱で形を崩され(火剋金)、猛火は水でもって消され(水剋火)、水中に土がまじると水質は悪化し(土剋水)、土は草木に栄養をとられて(木剋土)、木は斧で切り倒されます(金剋木)。このように何かから何かを傷つける循環を相剋(そうこく)の関係といいます。五行は循環が妨げられるのを嫌います。相生や相剋の関係によって気が多すぎたり害されて減じるとバランスが損なわれ、最終的に1つないし2つの気しか残らず気の停滞が起こり腐れます。
さて、家相の定位盤からみると、北東は八白土星、南西方は二黒土星の方角です。この二黒土星と八白土星は、家相では土星の言葉通り五行でいうところの土行にあたります(この星たちの仲間には、他にも帝王星と呼ばれる五黄土星がいます)。
土行は五行の循環において、火から生じられ金を育む(火生土/土生金)と同時に、木から栄養を吸い取られ水を濁します(木剋土/土剋水)。
水を濁す土行である二黒土星と八白土星の方角に、水を使う三備(トイレ・台所・風呂)をもってきてはいけないのは「土剋水」のためです。
九星の象意作用
話は逸れますが家相は2つの点を重視し、そこに吉凶を判じます。一つは日常的に使用する上でいかに安全・清潔・便利を実現する「空間」かということ。そして、もう一つが星(五行の各気)にどのような影響を与えるかをみる「運勢」に関することです。
星にはそれぞれ象徴的な作用があり、ここに一部を書き出すと、二黒は「労働・育成・従順・遅延・無・古い」、八白は「相続・貯蓄・改革・変化・始まり・終わり」等々があります。
鬼門の方角である八白は上記の通り、継承・節目・蓄えるの意味を持ちます。これらが良い意味で作用するように整えることができれば、血筋の存続や今までの不調が好調に変るなど吉作用を受けられるのですが、上手に整えることができなければ、蓄財に気持ちがいきすぎて大事なときにお金を惜しんだり、家族間でギクシャクして一家離散したり、と八白の凶作用がでてきてしまいます。
また、裏鬼門の二黒に関しても吉作用であれば、子供は順調に育ちますし、会社を経営していれば従業員たちは働き者ですし、サラリーマンであれば労働意欲に満ち、主婦は元気で家庭をよく守ってくれます。しかし、これが凶となれば逆の悪いことが起きてくるのです。
むかしは血を分けた跡取りを残し、血脈を存続させるのが家にとっての最優先事項でした。今日においては家より人を大事にする世情でありますから継承を象意とする八白に対して、それほど神経質にならなくとも良いとも言えます。しかし、吉作用をとまではいいませんが、それでも凶作用は避けたいのが人情です。
また、そもそも生きるためにもお金は必要で、稼ぎを上手にやりくりして日々を過ごし、将来の不測の事態に備えるのが人ひとりの生においても重要です。しかし、蓄えるにしても、まず稼ぎを得るために仕事をせねば、お金は増えません。
二黒は労働を司る星、八白は蓄える作用を司る星ですので、生き続けたいのであればとかく慎重に対処しなければならない方角です。そもそもお金自体は金行の七赤金星の象意ですが、金行は五行の循環によって土行によって育まれる気(土生金)です。このためお金を得るためには、まずは労働(二黒)が必要で、次にお金を保持し続けるためには貯蓄(八白)がさらに必要のため、中国の手に余るような困った方角であると鬼門という言葉を使い、北東定位である八白土星を鬼門、その反対側である南西定位の二黒土星を裏鬼門と呼称し、犯せばただでは済まなくなると注意を促したのではないかと考えます。
鬼門の間取り
鬼門にかかる間取りのなかで持ってきても無難なのは「寝室」や「書斎」等で、逆に設けてはいけないのは「トイレ」「お風呂」「キッチン」等の水回りや火の気、空気の出入り口である「玄関」は、鬼門の方角は避けた方が良いとされています。
汚れやすいトイレやキッチンを鬼門に持ってきてしまった場合は、清潔であるように特に心がけが必要で、換気扇を上手に使って臭いがこもらないようにも工夫しましょう。また、浴室は使い終わったらお風呂の残り湯はすぐに抜き、換気扇をまわして湿気をできるだけ速やかに外に出すことで、鬼門の凶作用を抑えるようにすると良いでしょう。
玄関においてはシューズボックスのなかは要注意で、普段は密閉しており空気の入れ替えがされにくいシューズボックスが、家の中と外の気温の差が大きい玄関にあり、さらには汗とともに栄養素になる皮脂汚れ等のタンパク質がついた靴が中に納まるのです。これはカビの成長条件がそろっており、よくよく気をつけなければカビが爆発的に増えます。 鬼門においては空気が清浄であることも重要です。「シューズボックスの中へは一晩靴は乾かしてから入れる」「定期的にシューズボックスの中に扇風機をあてて湿気を散らす」等、カビを増やさないように気をつけましょう。
引っ越しの方位・方角
新しい家へと引っ越しをする際に、ふと「今この時期に転居するのは大丈夫だろうか?」「使っちゃいけない悪い方位があるって聞いたんだけど?」「五黄の方位ってなに?」と疑問に思ったことはありませんか?
家相を気にしているのだから、方位も気になるのも当然のことで、家相と方位はそれぞれ、五行の気の作用に陰と陽の易哲理を取り入れた九星気学のうちの一つで、家相と方位は2つで1つのセットのものなのです。
ここでは家相はひとまずおいておいて、引っ越す際に気をつけたい方位術について説明していきます。
そもそも方位術とは
方位術とは、はるか昔に先人たちが発見した、積極的な開運のためのツールです。生き物は「おんぎゃーっ」と産声をあげて生まれた瞬間から、等しく滅(死)に向かって歩みを始めます。そのため生を歩む上で、どうしても無意識のうちにマイナス要素やトラブルを招く、滅の方角へとふらふらと引き寄せられていってしまいます。
これが生き物の性だとしても、指をくわえて流されるまま不幸になりたい人はいないはず。知恵ある生き物として、何とかこの「滅(死)」に抗うすべはないのかと悩んだ結果、古の先人たちは、ついに大自然の中に一定の法則があることを知り、その法則に従えば幸運が訪れ、背けば数々の不運に見舞われることを発見しました。そして、長い年月をかけて、この法則を活用できるよう「九星術(方位術/家相術)」として体系づけてきたのです。
九星気学の名のとおり「一白水星・二黒土星・三碧木星・四緑木星・五黄土星・六白金星・七赤金星・八白土星・九紫火星」の9つの気で構成されています。この気は常に一定の法則に従い、毎年・毎月・毎日・毎時、刻々と運行する方角を変えながら、その昔から現在・未来まで、絶え間なく動き続けています。
吉方位と凶方位
吉方位とは、自分の内に取り入れて自身の力にできる良い気(祐気)がまわっている方角のことです。これは、生まれ年や月で決まっており、家族や同年齢の人といえど、必ずしも一致しません。
九紫火星の人が、この良い気を取り入れつつ仮に新居に引っ越しをしようとする場合は、今自分が住んでいるところから、新居のある方角上に上記の力になってくれる気(二黒や八白の気)がまわってる間に引っ越しを行うと良いというふうになります。
一方、凶方位とは、自分が相手を傷つけたり、相手から自分が傷つけられる悪い気(剋気)のことで、この中で特に気をつけなければいけない気のことを「八大凶殺」といいます。
八大凶殺
- 五黄殺(ごうおうさつ)
- 暗剣殺(あんけんさつ)
- 歳破(さいは)
- 月破(げっぱ)
- 定位対沖(ていいたいちゅう)
- 本/月命殺(ほん/げつめいさつ)
- 本/月命的殺(ほん/げつめいてきさつ)
- 小児殺(しょうにさつ)
この八大凶殺の中の内「五黄殺・暗剣殺・歳破・月破・定位対沖」は誰が使っても悪い気を受けます。たとえ、その方角に自分の吉方位がまわっていても、犯せば凶作用を受けてしまうので、決して使ってはいけません。
本命殺・本命的殺と、月命殺・月的殺は、人によって違います。また年齢によっては、本命殺・本命的殺より、月命殺・月的殺の作用を重くみる場合もあり、個別にみていく必要があります。
小児殺は15歳以下の子供に強く影響を与えるものなので、大人には関係がありませんが、妊娠期間中は、この気がまわっている方角を使うと胎児に影響がでてしまうので、妊婦さんは使うことができません。
上でも少し出ていましたが五黄の方位というのが、この八大凶殺のひとつである凶方位のことです。八大凶殺の中で特に注意が必要な凶殺で、引っ越しに限らず、長期旅行等にも必ず避けることをおすすめします。
引っ越し時は各家族の吉方位・方角で!
新居へ移転する際やリフォームで家をあける際は、今住んでいる場所から、引っ越しする方角が吉方位なのか凶方位なのかは必ず確認してください。
ここで吉方位は人によってそれぞれ違いますから、よく、ほかの家族に対してその方角が凶方位でも、一家の家計を支えている大黒柱からみて吉方位であれば、家族そろって引っ越しするのに悪くない方角だと考える人もいますが、それは半分正解で、半分はずれです。
確かに大黒柱さえ無事であれば体調を崩して働けず金銭面で困窮する、といった事はないのかもしれません。しかしながら、内助を行い支えてくれる奥さんの健康や、子供の健やかな成長もそこになければ、それは決して幸せな家庭とはいえません。
よい方角で引っ越しできない場合
毎年・毎月・毎日・毎時、刻々と方角にまわる気は変化していきます。良い気を受けることが開運への近道とはいっても、就学前の小さい子がいて個別に新居に引っ越しするのが難しい、どうしてもこの方角に狙った吉方位がまわってこない等、引っ越しする方角が凶方位でも移動せざるをえない場合でてきます。
お札は神仏の加護が込められた依代です。神棚や仏壇にご安置し、常に場を清潔に保ち、お供え物を奉じてお祀りします。
お札は三社造りの神棚の場合は向かって「中央に天照大御神/右に鎮守神または氏神/左に各神社仏閣でいただいたお札」、一社造りは「一番上に天照大御神/その下に鎮守神または氏神/さらに下に各地の授与札」を神棚内部に納め、いずれも特別な理由がない限り扉は開けずに閉めてお祀りします。仏壇の場合は、お祀りしているご本尊様とかぶらないように、上段に並べて安置します。
ほかに神棚及び仏壇がない場合や、内部に入らないような大きさのお札の場合は、お札立てを使い壁際の清潔な高い位置に並列にお祀りしましょう。
しかし、この方災除の方法だと方位の作用はゼロにすることができますが、ゼロするだけで開運のための良い気の作用を全く期待できなくなるため、家相の吉作用がでてくる数年までは、自力で何とかしていく他なくなってしまいます。ひと一人の努力で、できることは限られています。ですので、引っ越しの際は可能な限り吉方位を使い、新居にうつることをおすすめする次第であります。